
以前ご紹介した本の中では、人間の脳には意思決定を支配する2つのシステムが組み込まれていることと、投資において感情がロジックを支配する理由が紹介されています。
Xシステム
一つ目は、意思決定において感情的なアプローチを用いるXシステムと呼ばれるもの。人間の脳において初期設定として組み込まれており、全ての情報はここで最初に処理されます。過去の体験などとの類似性、親近感など基にした自動的なプロセスであるため、我々にとって何の労力もかかりません。一言でいえば、感情や直観に頼ると楽だということ。 知的ショートカット(Mental shortcut)をすることで、効率的に大量の情報を瞬時に捌くことが出来ます。人間は直感を信じ、Xシステムを意思決定に多用する傾向にあります。
Cシステム
一方、Cシステムは情報を演繹的、ロジカルに処理するものです。情報処理の段階が複数に及ぶため、情報処理の速度がXシステムに比べて遅く、また、結論を出すためにエビデンスとロジックが必要です。人間は意思決定の際に、ロジックに依存するCシステムよりも、先に述べた、感情をベースとしたXシステムに頼る強い傾向があります。例えば、不意につま先や頭をモノにぶつけたりしたときに、自分の過ちでなく、物体を責めたりなど。投資で言えば、直観や衝動に任せて、慌てて売ったり買ったりするといった行動があげられると思います。
なぜ人間は、感情をベースにしたXシステムに頼る傾向にあるのか
脳神経学者の研究では、進化論的には感情をベースとしたXシステムを司る脳の部位の方が、ロジックをベースとしたCシステムを司る部位よりも古いということがわかりました。つまり、進化の過程ではロジックよりも感情を司る機能の方が重要視されてきたということです。例えば、ガラスの中に入ったヘビが威嚇した際、我々が反射的に飛び上がってしまうのは、Xシステムが我々人間の安全を担保しているから。我々が、ヘビが動いていると認識した瞬間に、情報が恐怖やリスクなどを司る扁桃体に送られ、体が瞬時に反応するようになっています。情報がもう一つの経路で、ロジックを支配するCシステムに送られ、我々とヘビとの間にガラスが一枚あり、飛び上がって危険を回避する必要はないと気づく頃には、我々は既に飛び上がってしまっています。
生存の観点から言えば、偽陽性(False positive)の方が偽陰性(False negative)よりも重要ということで、人間の進化の過程では、感情を司るXシステムの方が、ロジックを司るCシステムより優先されたのではないかと述べられています。偽陽性、つまり、 本当は危険ではないけれども、全て危険という前提で反射的に反応することが、生存競争では重要で、これには感情を司るXシステムが有益というものです。