
前回の本の続きで、感情・恐怖が人間の意思決定に与える影響を調べた実験です。
実験対象
- 脳に損傷があり恐怖を感じることが出来ないグループ
- 脳に損傷のないグループ
- 脳でも感情・恐怖とは関係のない部位に損傷があるグループ
実験内容
最初に20ドルを与えられ、合計20ラウンド、毎回の賭けのコストが1ドルのゲームを行います。各ラウンドでコイントスを行い、表が出れば2.5ドル貰えます。各コイントスは独立事象です。つまり1ラウンドあたり1.25ドル、20ラウンド合計で25ドルの期待値ですので、20ラウンド全てで賭けるのが合理的判断です。合計で20ドル以下になる確率は13%しかありません。
結果
期待値がプラスですので、全てのラウンド(100%)で賭けることが合理的判断ですが、結果は、 1.感情を感じないグループが一番で84%のラウンドで賭けを行いました。2.脳に損傷のないグループは58%のラウンドで賭けを行い、3.脳でも恐怖・感情とは関係のない部位に損傷があるグループは61%のラウンドで賭けを行いました。
特に、感情を感じないグループが最も優位性を発揮したのは、損失が積み重なってきた後のラウンドです。独立事象なので、期待値がプラスであれば賭け続けるべきです。ところが、損失が重なると恐怖のせいで、感情を感じるグループは賭けを小さくする傾向がありました。例えば、感情を感じないグループは損失が重なっても85%以上のラウンドで賭けを行いましたが、感情を感じるグループは40%以下のラウンドでしか賭けを行いませんでした。
また、20ラウンドを4つに区分してみたところ、感情を感じないグループは前半、中盤、後半で均等に賭けを行いましたが、感情を感じるグループは、前半では70%賭けていたものの、後半にかけて50%以下しか賭けなくなることがわかりました。残念ながら、実験で参加者は過ちから学ぶことなく、逆に非合理な意思決定をする方に突き進んでいきました。
この実験が示唆するものは、投資家は恐怖でバーゲンセールを見逃してしまう傾向にあり、特に損失を出している時にその傾向が強いというもの。損失を抱え続ければ抱え続けるほど、非合理な意思決定をしてしまいます。
※この実験では賭けの期待値がプラスですが、マイナスであれば普通に感情を持った人の方が良い結果を残すものと思われます。