ROIC経営「日経新聞出版社」を読んでみた~所感その②

バイサイドに興味のある方は読むべき良書と紹介させていただきました。今回は、本書で触れられた資本生産性指標のバランスが表す意味について、解説したいと思います。

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ROA、ROIC、ROEの差が表す意味

ROA、ROIC、ROEといった資本生産性指標があり、多くの場合、ROA<ROIC≦ROEが成り立ちます。

ROAが著しく小さくなるのは、余剰現金や不要な投資有価証券などの非事業資産や遊休不動産が含まれている場合や、サプライヤーとの決済条件が良い場合(現金が買掛金でファイナンスされている)などです。後者では、分母の総資産が大きく見えるためROAが低く見えますが、バーゲニングパワーが強かったり、業界の商慣習でサプライヤーに対して有利に決済条件が設定されている可能性があるので、低ROAが必ずしもネガティブだとは言い切れません。むしろ、この場合の低ROAはフリーキャッシュフローの創出力を過小評価することになりかねないので、ROICを見ることで事業のクオリティについてより適切な評価が下せるでしょう。例えば、アップルなどは、多額の現金が買掛金でファイナンスされていたと記憶しています。ただし、一般的には、本書で指摘されている通り、ROAとROICの差が小さければ小さいほど会社の財務体質は筋肉質であると言えます。

また、運用サイド(バランスシートの左側)をベースにしたROICと調達サイド(バランスシートの右側)をベースにしたROICを比較したときに、運用サイドベースのROICが大きい場合は、会社が余剰現金や不要な投資有価証券を有していることが多いです。または、アセットライトなサービス業で設備投資を殆ど必要としないビジネスモデルでは、運用サイドのROICが50%で、調達サイドのROICが10%です、みたいな会社も多く見受けられます。日本企業のバランスシートは一般的に肥大化しているために、リターンの高い素晴らしい事業であるにもかかわらず、調達サイドでみたROICがパッとしないということがあります。この場合、本業でリターンを生む投資ができない場合は、株主還元を通じてバランスシートのサイズをコントロールすべきでしょうが、日本企業のマネジメントは保守的で、資本コストに対する意識も希薄なので、なかなかエンゲージメントが難しいです。

ROEとROICの差は、会社がどれだけレバレッジを活用しているかよって決まりますが、日本企業にはネットキャッシュでROEとROICの差が小さい会社が多く見受けられます。

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